今回はスモールビジネスをやっていくうえで、
節税の基本となる「小規模企業共済」について記載します。

小規模企業共済ってどんなもの?

小規模企業共済とは簡単にいうと「スモールビジネスオーナーの退職金の積立て」です。

大企業では会社によっては退職金制度がありますが
小規模企業には退職金制度がないところが多いので
国が小規模企業に向けてつくった退職金制度です。

国の機関である独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、中小機構といいます)
がこの制度を運用しています。

対象者は簡単に言うと「小規模企業の個人事業主や会社役員とその共同経営者」です。
詳細はこちらに記載があります。
業種によって「小規模企業」となる従業員数が異なるので、注意が必要です。
なお、加入時に「小規模企業」の従業員数を満たしていれば
加入後に従業員数が増えたとしても加入し続けることができます。

加入したい場合は、お近くの商工会や一部の金融機関などで手続きができます。
こちらが窓口です。

どうして節税になるの?

小規模企業共済は所得税や住民税を計算するうえで、
掛金を「所得控除」として所得金額から引けるので
その分所得税や住民税が低くなるため、節税になります。

事業にかかわる税金はいろいろなものがあってわかりにくいですが、
小規模企業共済はビジネスオーナーご自身(個人)の「所得税」と「住民税」の節税になります。
(事業や会社の経費として落とすわけではありません。)

掛金はいくら?

掛金月額は1,000円から70,000円までの範囲内で500円刻みで自由に選べます。
半年払いや年払いとすることもできます。

業績のよいときは掛金を多くして業績が厳しくなったら掛金を少なくすることができますが
途中で掛金を変動させる場合は受け取れる共済金に影響がありますので注意が必要です。
(次の「共済金はいくら受け取れる?」をご参照ください。)

控除の対象となる掛金はその年に「支払った」掛金です。
例えば令和4年の確定申告では令和4年1月1日~12月31日までに
「支払った」掛金が対象となります。

共済金はいくら受け取れる?

加入していた期間や掛金の金額により受け取れる共済金額が変わります。
加入期間が短いと以下のようになりますので注意が必要です。

  • 加入期間が6ヶ月未満の場合は全くお金がかえってきません
  • 加入期間が12ヶ月未満の場合は準共済金と解約手当金がありません
  • 加入期間が20年未満で任意解約してしまうと共済金は掛金を下回ってしまいます(元本割れ)
  • 加入期間が20年を超えていても、途中で掛金を増減させていた場合で掛金区分ごとの掛金納付月数が20年を下回ったときには、任意解約した際の共済金が掛金の合計を下回る(元本割れ)ことがあるので注意が必要です

加入期間は長ければ長い方がいいので早めに加入すること
任意解約することや元本割れになるような掛金増減をする必要がないように
余剰資金内でやることが大切です。

受取方法は「一括受取」「分割受取」「一括と分割の併用」があります。

こちらで受け取れる共済金や節税効果のシュミレーションができますので
加入を検討される際は利用してみてもよいですね。

受け取った共済金に税金はかかるの?

受け取った共済金は税務上、以下のような扱いになります。

受取方法税務上の扱い
一括受取退職所得
分割受取公的年金等の雑所得
一括と分割の併用(一括分)退職所得
(分割分)公的年金等の雑所得
65歳以上の方が任意解約退職所得
65歳未満の方が任意解約一時所得

退職所得は老後の生活費になるものなので、
ほかの所得と比べて税負担が軽くなっています

例えば、年間12万円の掛金を20年間納付した場合
受け取れる共済金は2,658,800円(こちらを参照しました)となり
その共済金(退職所得)にかかる税金は0円となります。
退職所得 (2,658,800円400,000円×20年)×1/2 = 0
       共済金  退職所得控除額

つまり加入期間が長い場合は共済金の税金はかからない又は少なくなりお得です。

公的年金等の雑所得扱いの場合もほかの所得と比較して
税負担が軽いため、税金的に優遇されていると言えます。

なお、65歳未満の方が任意解約した場合には一時所得となりますが、
その時に今までの掛金は一時所得の「収入を得るために支出した金額」
(経費)にならないので注意が必要です。

節税以外のメリット、貸付制度

事業を続けていると一時的に資金繰りが厳しいときがあるかもしれません。

そんなときは小規模企業共済の貸付制度を利用することができます。
掛金の範囲内で無担保、無保証、低金利で貸付が受けられます。

なお、2022年9月30日まではコロナによる特例措置で
利率0%で「特例緊急経営安定貸付け」を実施しています。

まとめ

今回はスモールビジネスの節税の基本となる「小規模企業共済」について簡単に記載しました。

加入期間は節税となり、受け取る共済金は場合によっては税金がかからないため
うまく使えばとてもお得な制度です。

加入期間が短かい場合は元本割れすることや
掛金を変動させると元本割れする可能性があるというデメリットをきちんと理解して
適切に活用していきたいですね。

編集後記

税金の話でたまに「この節税方法を知らないと損!?」
といったような表現を目にします。
実際に知らないと損なのかもしれませんが、
私はなんとなく不安をあおられるような気がしてあまり好きではないので
なるべくつかわないように気をつけています。

ひとりごと

記録的な暑さのあとは台風がきたり心配な天気が続いていましたね。
私の住む地域では警戒していたほどの雨はありませんでしたが
みなさまお気をつけください。